『高学歴モンスター : 一流大学卒の迷惑な人たち』(小学館新書) 片田 珠美 著

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 10:48

『高学歴モンスター : 一流大学卒の迷惑な人たち』

(小学館新書)

  片田 珠美 著

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   自己愛過剰社会が高学歴モンスターを生む

 

 

学歴偏重社会である日本では、高学歴というだけで価値がある人間だという評価が得られたりします。

本来立派であるはずの一流大卒の高学歴な人が周囲に迷惑を巻き起こす事例が最近目立っています。

そんな「高学歴モンスター」の精神構造を、精神科医である片田が豊富な実例とともに分析し、対処法をレクチャーするのが本書です。

 

冒頭は「この、ハゲーッ!」発言で知られる豊田真由子元衆議院議員の事例で始まります。

高学歴エリートがモンスター化する例としてはこれ以上のものはないため、つかみは完璧です。

他にも務台俊介、今村雅弘、山尾志桜里、大王製紙の井川意高などを取り上げて、

片田はこれらの人物の特徴を以下のようにまとめています。

 

 ゞい特権意識

◆〜杼力と共感の欠如

 現実否認

ぁ‐況判断の甘さ

ァー覚の欠如

 

学歴によって「自分は特別だ」という特権意識を持つため、

他人への想像力のない自己中心的な振る舞いを平気でしてしまう、

その自己中心的発想を正当化するために現実を認めないので、

状況判断もできなければ、自分を客観視もできないのです。

精神医学の学問的背景があるだけに、この分析に関しては非常に妥当だと感じました。

おそらく、誰もが周囲にいる肩書きだけで中身のない人物について思い当たるのではないでしょうか。

 

片田は高学歴の人がこのような「モンスター」となる要因に、自己愛の強さがあることを指摘します。

アメリカの精神科医のグレン・ギャバードがナルシストを「無自覚型」「過剰警戒型」の2種類に分けたことを紹介し、

本書に取り上げた人物には「無自覚型」のナルシストの特徴が当てはまるとしています。

片田はその無自覚の奥には「鈍感さ」があるとして、その原因を以下の3つに整理します。

 

 ,發箸發抜脅性が低い

◆‖梢佑糧娠を遮断

 周囲の容認

 

片田は「無自覚型」になりやすい人物として、「先生」と呼ばれる人や、

「高学歴のうえ、社長の御曹司」という条件を挙げています。

この辺りの指摘も「身につまされる」ほどに納得しました。

 

僕が「身につまされる」というのは、実は僕自身が「高学歴モンスター」に嫌な目にあわされているからなのです。

僕が立命館大学の准教授である千葉雅也の著書に、Amazonで批判的なレビューを書いたところ、

千葉が自身のツイッターで「侮辱」だ「中傷」だなどと騒ぎ立て、

果ては僕のレビューのコメント欄に「弁護士に相談している」などと貼り付け、

なにか僕が違法行為でもしているかのような印象操作を行いました。

 

僕のレビューは千葉自身の文章への応答となっているので、よく読めば批判される原因はすべて千葉自身の文章にあるのですが、

千葉は自身の発言についてを省みることなく、一方的に僕の悪口をツイートしたのです。

本書を読んで、僕は千葉雅也が「無自覚型」ナルシストに加えて「過剰警戒型」の特徴もかなり持っているように感じました。

 

「無自覚型」が「他人の反応を遮断する」ことの理由は、

ナルシストが自己愛が傷つくことを恐れて、自己評価を守ろうとするからだと片田は述べています。

その傾向がさらに強まったのが、「過剰警戒型」ナルシストなのだそうです。

 

このタイプは、他人の反応に過敏で、他人の言葉に少しでも批判や侮辱が含まれていると感じると過剰に気にする。これは、羞恥や屈辱に人一倍敏感で、ちょっとしたことで傷つけられたと思いやすいためである。要するに、自己愛が傷つきやすいからこそ、過剰に警戒して守ろうとするわけだが、こうした傾向は「無自覚型」にも認められる。

 

この片田の記述を読んで、僕はまさにその通り、と思いました。

片田は本書の最後でエーリッヒ・フロム『悪について』に書かれた「悪性のナルシシズム」に触れています。

ナルシシズムにも良性と悪性があり、その分かれ目は努力の結果で得られたものか否かにあります。

努力や経験に裏打ちされたナルシシズムは良性ですし、基盤があるものなので他人の批判など恐れる必要はありません。

しかし、与えられたものによって成立した悪性のナルシシズムの場合、自分自身に基盤がないため、

高い自己評価は表面上のメッキでしかなく、小さな傷でペロッと剥がれてしまうということです。

 

これを反転させて考えると、

揶揄程度の批判でしかないものを「侮辱」だ「中傷」だと騒ぐ人は、

自分の評価がメッキで成立していると「無自覚」に認めていることになるのではないでしょうか。

千葉はたいした研究実績もなく、マスコミの引いたレールの上でチヤホヤされているだけの人なので、

与えられたメッキでしかない自己評価を守ることに必死になっているわけです。

 

准教授でもあるような人が、無名のネットレビュアーなどに執拗に文句を言っても得られるものはないはずなのですが、

高学歴エリートの中には幼児期のナルシシズムを引きずっている人がいて、

そういう人に「拒絶過敏性」が現れるそうです。

 

自尊心の傷つきを恐れるあまり、他人のささいな言動を批判や非難、ときには無視や拒否のように受け止めて否定的に解釈することもある。これは、精神医学では「拒絶過敏性」と呼ばれている。

 

「過剰警戒型」ナルシストと類似していますが、

うすっぺらい自尊心を持つ人間ほど、ほんの少しの批判にも過剰に反応するということでしょう。

俗に言う「弱い犬ほどよく吠える」ということですね。

千葉のような勉強が自慢の人が専門領域で反論をすることもできないなんて、自分の中身がないことを自ら証明しているだけなのですが、

それが「無自覚型」ナルシストというやつなのでしょう。

 

話を本書に戻します。

本書に感心したのは、単に困った人の症例を紹介するだけにとどまらず、

その原因が社会にあることにまで踏み込んだ点です。

片田によると「アメリカは世界一の自己愛過剰社会なのだ」そうですが、

その原因として心理学者たちの自尊心ブームがあると見ています。

アブラハム・H・マズローが自尊心の欲求を上位の階層に位置づけて、

ナサニエル・ブランデンが自負心を「人生の鍵」とまで評価したため、

自尊心とナルシシズムが混同されて、自己愛過剰の状態に陥ってしまいました。

その影響が遅れて外来思想をありがたがる日本にも到来し、子供を褒めて育てればいいという、

いたずらにナルシシズムを高めるやり方が広まりました。

 

フロイトは「経験によって強化された全能感」こそが健全な自己愛としているのですが、

「叱らず、ほめる子育て」が横行し、「経験にもとづかない全能感を抱く子供が増えた」と片田は述べます。

問題はそんな幼児的全能感を大人になっても抱え続けている大人が多いことです。

片田はハッキリとは書いていませんが、まともに叱れない親に問題があると言えます。

 

片田は高学歴モンスターを変えるのは無理だと言います。

その前提で対処法を述べているのですが、なるべく関わらないほうがいいという方向性でした。

関わったあとの有効な対策が書かれていないことが少し不満でしたが、

片田が「無自覚型」ナルシストの「鈍感さ」の原因として、「周囲の容認」を挙げていることを思い出す必要があります。

もともと高学歴を誇る人は、権力の源泉である世俗のヒエラルキーに従順です。

周囲が何も言わないから彼らはつけあがるのであって、

世俗権力から問題を指摘されれば態度を改めざるをえないわけです。

僕は千葉の所属する立命館大学に彼の行状を問い合わせるメールを送ったのですが、

それ以後、僕を名指しした悪意のツイートはパッタリなくなりました。

敗北した千葉の自分を納得させる勘違いツイートが傑作なのでちょっと載せます。

 

千葉雅也『メイキング・オブ・勉強の哲学』発売中

@masayachiba

 

自分で自分を肯定するというのは簡単ではない。一時的ではあれ、それに成功した状態は、気持ち悪がられる。それが成功していない方が普通だからだろう。

午後11:14 · 2018年5月4日

 

千葉の自己肯定はナルシシズムの強化でしかないため、

ナルシストであることは簡単ではない、と言っているのと同じです。

なかなか成功しないことを成し遂げている僕はすごいから、キモがられるのだ、という難易度の高い(?)自己肯定発言です。

一生やってろ、と言いたいですね。

 

御神体が鏡であることでもわかるように、日本はもともと自己認識のメカニズムにナルシシズムを置いている国です。

それを暴走させないために「世間の目」を意識させる村社会構造が必要とされていました。

近代的個人の自覚を育てずに「世間の目」だけを解体したために、こういう勘違いした人間を多く生み出しているのです。

ある意味、「高学歴モンスター」はそれを容認する周囲の人間が生み出しているということ、

もっといえば学歴だけで人間を評価しすぎる「肩書き社会」に問題があることを、

片田にはもう少し強調してほしかったところです。

 

 

 

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